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ブログテーマ 凍れ(しばれ)

お湯花火の原理

よく冷えた寒い日に、空中に熱湯をまくと、氷の湯気が出来る「お湯花火」という遊びがあります。お湯をまいた途端に氷の湯気となり、液体のお湯はほとんど地面に落ちてきません。経験的には-25℃くらいまで下がるとお湯花火が出来ます。
南極観測隊では、隊員たちが、南極の寒さを紹介するために、南極教室などでお湯花火を実演することがあります。


テンキノススメ (第60次南極地域観測隊 井上創介さん)

また、北海道でも、お湯花火が出来るくらい冷え込むことがあります。


提供:鹿追町 Mushing Works Sled Dog Tours ;Takeshi Takitaさん
Facebookページでは動画が掲載されています。
https://www.facebook.com/takeshi.takita/posts/4791349384276231
※このときは気温-17℃くらいで、お湯の一部は液体のまま落ちてきたそうです。

このお湯花火はどういう原理なのでしょうか?
簡単に言えば、あまりに寒いので、水の粒の湯気ではなくて、氷で出来た湯気が出来てしまうのです。

熱湯を空中にまくと蒸発していきます。空気は冷たいほど、空気中に保つことができる水蒸気の量(専門的な言葉で飽和水蒸気量といいます)が少なくなります。お湯花火ができるような低温の空気は、飽和水蒸気量が極端に小さく、お湯から蒸発した水蒸気が一瞬で空気中に保つことが出来る量を超えた状態(専門的な言葉で「過飽和」といいます)になり、周囲の気温が低いため氷晶となって出てくるのです。(正確には氷晶のほか、過冷却された水滴による湯気もでてきます)

お湯花火を成功させるコツは3つあります。
1つ目はできるだけ熱いお湯を使うことです。温度が高いほど速く蒸発します。ぬるま湯では大部分が蒸発する前に、お湯のままで落ちてきてしまうでしょう。
2つ目は気温が低いときに行うことです。気温が高いと、氷晶は出来ず、単に湯気のみがでることになります。
3つ目は、勢いよく上に向かってまくことです。お湯の表面積と滞空時間が増え、落下する前に蒸発しやすくなります。

よくある間違いに、お湯花火をムペンバ現象・ムペンバ効果のため、と説明している例があります。
ムペンバ現象というのは、お湯と水を同時に冷やした時、お湯の方が速く氷になる場合がある、という現象です。ムペンバ現象は実際に存在するのですが、液体の水が固体の水に変わるときの話です。お湯花火の場合は、液体の水が水蒸気になったあと、水蒸気から直接氷になって出てきていますので、ムペンバ現象は当てはまらないのです。お湯でなければならないのは、素早く蒸発させるためです。

金森晶作(とかち鹿追ジオパーク 環境科学専門員/ 第60次南極地域観測隊 越冬隊員)

 

 

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